増値税一本化改革について(二) 2018-01-15
次に、増値税です。
(一)免税取引
(1)物品の輸出、役務及び無体財産の国外への販売、免税店経営
(2)農業生産者による自ら生産した農産品の販売
(3)避妊薬と避妊用具の販売
(4)古本古書の販売
(5)直接科学研究、科学試験・教学の使用に供する機器、設備の輸入
(6)外国政府及び国際組織が無償で援助した輸入物資及び設備
(7)身体障碍者組織が直接輸入した身体障碍者専用物品
(8)使用したことのある自己の物品の販売
(9)個人所有の著作権や持分、購入して2年以上経過した住宅の譲渡
(10)県レベル以上の教育管理部門の審査認可を経て、許可証を取得した0歳から6歳までの就学前教育を行う託児所及び幼稚園(各種託児所、幼稚園、学前クラス、幼児クラス、保育院、幼児院を含む)が提供する保育・教育サービス
(11)年金機構が提供する介護サービス
(12)身体障碍者福祉機構が提供する養育サービス
(13)婚姻紹介サービス
(14)火葬埋葬サービス
(15)身体障碍者本人が社会に提供するサービス
(16)「医療機構執務許可証」を取得した各種医療機構及び軍所属の各種医療機構が提供する医療サービス
(17)学歴教育を行う学校(教育管理部門の審査認可を経て国が承認する学歴証書を授与しうる各種公立・私立学校を含む。)が提供する教育サービス
(18)学生が提供するアルバイトサービス
(19)農業機械耕作、排水灌漑、病虫害予防駆除、植物保護、農業牧畜業保険及び関連技術の養成業務並びに家禽、家畜、水生動物の種付け及び疾病の予防治療
(20)記念館、博物館、文化館、文物保護単位管理機構、美術館、展覧館、書画院、図書館がその館内又は院内で文化体育サービスを提供するにあたって取得した元売りチケット収入
(21)寺院、宮観、モスル及び教会が文化、宗教活動を行うにあたって取得したチケット収入
(22)行政機構以外のその他組織が収受した政府関連基金及び行政事業関連費用
(23)個人の著作権の譲渡
(24)個人が自己使用目的で自分で建築した住宅の譲渡
(25)公共賃貸住宅の賃貸(2018年12月31日まで)
(26)中国政府部門の許可を得た台湾の海運会社、航空会社が台湾海峡両岸を結ぶ海上直行、空中直航業務を行うにあたって大陸で取得した運輸収入
(27)納税者が提供した直接的又は間接的な国際貨物輸送代理サービス
(28)国が行った学生ローン、国債、地方政府債、金融機構に対する人民銀行の貸付け、住宅積立金管理センターが指定された銀行に委託して住宅積立金で行わせた個人住宅ローン及び外貨管理部門が金融機構に委託して行わせた外貨貸付けの利子並びに統一貸借統一償還業務で企業グループ又は当該グループの中の核心企業及びグループ所属の財務会社が金融機構に支払う貸付け利息又は債券額面利息を上回らないレベルで企業グループ又はグループ内の所属企業に対して収受した利息
(29)取り消された金融機構が物品、不動産、無体財産、有価証券、手形などの財産で行った債務返済
(30)保険会社が取り扱う保険期間一年以上の人身保険商品で取得した保険料収入
(31)次に掲げる金融商品の譲渡
ア)適格な海外投資者(QFII)が国内の会社に委託して国内で行わせた証券売買業務
イ)香港市場投資者(組織及び個人を含む。)が沪港通ルートを通じて行った上海証券取引所上場のA株の売買
ウ)香港市場投資者(組織及び個人を含む。)に対して基金互認ルートを通じて行った国内の基金の売買
エ)証券投資基金管理人が基金を運用して行った株式、債券の売買
オ)個人が行った金融商品譲渡業務
(32)金融同業往来(金融機構と人民銀行の間の資金往来、同一銀行系統内部の資金往来及び金融機構間の資金往来を含む。)の利息収入
(33)法定の条件に適合する保証機構が中小企業信用保証又は再保証業務を行うことで取得した保証料(3年以内で免税)
(34)国家物品準備管理組織及びその直属企業が物品準備任務を担うために中央又は地方の財政から取得した利息補償収入及び価格差額補償収入
(35)納税者が行った技術譲渡、技術開発及び関連する技術コンサルティング、技術サービス
(36)法定条件に適合する契約エネルギー管理サービス
(37)政府設立の学歴教育従事の高等、中等及び初等学校(その所属組織を含まない。)が研究班、養成班を開いて取得したすべての当該学校の所有となる収入
(38)政府設立の職業学校が在校生に実習現場を提供するために自ら出資し、かつ自ら経営管理し、取得した収入を当該学校の所有とする企業を設立して、現代サービス(ファイナンスリース、広告その他現代サービスを含まない。)生活サービス(文化体育サービスその他生活サービス及びソウナ、酸素バーを含まない。)を提供して取得した収入
(39)家政サービス企業がその従業員である家政サービス員に家政サービスを提供させて取得した収入
(40)福祉宝くじ、スポーツ宝くじの発行で得た収入
(41)軍隊の遊休建物の賃貸収入
(42)国の住宅制度改革に合わせて企業及び行政組織が住宅改革コスト価格又は標準価格で住宅を販売して取得した収入
(43)農業生産のための土地使用権の農業生産者への譲渡
(44)家庭財産の分割に及ぶ不動産・土地使用権の個人的な無償譲渡
(45)土地所有者による土地使用権の払い下げ及び土地使用者による土地使用権の土地所有者への返還
(46)県レベル以上の地方人民政府又は自然資源行政主管部門による自然資源使用権(土地使用権を含まない。)の払い下げ、譲渡及び回収
(47)従軍家族が起業する場合、税務登録証を受領する日から3年以内に増値税の納税義務が免除される。
(48)退役軍人のうち幹部たるものが起業する場合、税務登録証を受領する日から3年以内に増値税の納税義務が免除される。
(49)農産物の卸売り・小売り事業に従事する納税者が一部生鮮肉卵製品を販売する場合、増値税の納税義務が免除される。
(二)課税しない取引
(1)行政機構が収受した政府関係の基金または行政事業関係の費用収受(ただし、(i)国務院もしくは財政部の認可により設立された政府関係の基金または国務院もしくは省レベルの人民政府及びその財政、価格主管部門の認可により設立された行政事業関係の費用収受であること、(ii)収受する際省レベル以上(省レベルを含む)の財政部門が監督印刷した財政証票を発行すること、(iii)収受された金員が全額財政に上納されること)
(2)単位又は個人事業体に雇われた従業員が賃金を取得するために本単位又は使用者にサービスを提供する場合
(3)単位又は個人事業体がその従業員にサービスを提供する場合
(4)預貯金の利子
(5)被保険者に支払われた保険賠償
(6)不動産主管部門又はその指定機構、積立金管理センター、開発企業及び建物管理組織が代行して収受した建物専門維持補修資金
(7)資産組み換え過程で合併、分立、売却、置換え等の方式を通して、全部または一部の現物資産並びにその関連する債権、負債及び労働力を一括してその他の組織及び個人に譲渡する際に及んだ物品、不動産及び土地使用権の譲渡
(8)法に定めた公益事業のための取引と社会公衆を対象とするサービス
上記掲げた項目のほか、免税、非課税及び不課税の対象又は課税しない対象はまだまだあるかと思いますが、非課税と不課税の対象を合わせると、一般消費税の課税しない対象の範囲は明らかに増値税を大きく上回っています。しかも、「公益事業のための取引」や「社会公衆を対象とするサービス」のような原則的な定めは、より明確な法的解釈がない限り、実際に応用するのはかなり難しいかと予想されますので、増値税の課税しない対象の範囲は一層狭くなるのでしょう。
一方、課税範囲が広いとはいえ、増値税は免税対象が多いのもご覧の通りです。一般消費税の非課税対象と不課税対象の多くは、増値税において免税、つまり0%の税率の適用対象となっています。輸出その他輸出類似取引の場合の仕入れ税額の控除や還付問題を考えなければ、免税と非課税及び不課税の効果はほとんど同じです。ただし、免税はあくまで課税対象について納税者の納税義務を暫定的に免除するものであり、永久に課税しないことを保証するものではありません。そういう意味で非課税及び不課税とはやはり根本的に違うのでしょう。
次に、納税義務者を見てみましょう。
前の比較で既に出てきましたが、一般消費税の納税義務者は、国内取引の場合は、当該取引を行う個人事業者と法人であり、個人を含みません。外国貨物を引取る場合は、当該引取りを行う者であり、事業者か個人かを問わないのです。これに対して、増値税の納税義務者は、国内取引の場合においても物品輸入の場合においてもみな当該取引又は輸入を行う組織(個人事業者、法人及びその他の非法人組織を含む。)と個人です。
しかし、一般消費税も増値税も、全ての納税義務者に対して実際に納税義務の履行を求めているわけではありません。両者ともそれぞれの所謂免税事業者又は課税開始基準があるのです。
例えば、一般消費税の場合、小規模事業者のうちその課税期間に係る基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の者は原則としてその課税期間の納税義務が免除されます。
これに対して、増値税の場合、課税取引の販売高が増値税徴収開始基準(月間販売高5000~20000元以内又は一回につき販売高が300~500元以内)に達さない個人と小規模納税者のうち月間販売高が20000元に達さない企業又は非企業組織は、当該徴収開始基準に達する前に納税義務が免税されます。
また、個人を納税義務者としながらも、中国の増値税は、個人が行う国内取引についていろいろな免税項目も設けています。これで中国の個人納税義務者はあたかも特別な恩恵でも与えられているようですが、一般消費税において事業者ではない個人が納税義務者にすらならないところからすれば、ただの笑い話でしょう。
⇒ つづき
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