中国ビジネスコンサルタント
北京度藍ビジネスコンサルティング会社
Japanese English Chinese
ホ-ム | 会社案内 | 業務内容 | 連絡方法 | パブリシティ- | プライバシ-ホリシ-
  
社長の呟き     
 
                         
増値税一本化改革について(三)
増値税一本化改革について(二)
増値税一本化改革について(一)
世界はQEからQTへ
年始にあたって
崩壊?それともハードランディング?
特別な土地法制度による特殊な問題
知っておきたい税務知識
「投資総額」及び「投注差」の意味
 
 
  












































 
北京度藍ビジネスコンサルティング会社

トランプ嵐と中国の外貨危機

2017-09-10        

    2017年度も半ばを過ぎてしまいました。最近、中国経済に関して「三頭の灰色の犀」という言い方がマスコミを騒がせています。何のことかと言いますと、経済分野で発生する確率が高く、且つ極めて影響が大きい三つの潜在的な危機、つまり当面の「不動産バブル」、「通貨・人民元の下落」と「銀行の不良資産の増大」の三つを指しますが、これが連鎖的に爆発したら、中国経済は崩壊するというのです。

    いかにもごもっとものような言い方ですが、ここ十年余りの中国の実際状況に照らし合わせますと、人を納得させることはできないでしょう。そもそも、資本主義経済に関するこれらの研究は、ドクサイの中国に当てはまるかどうか、それ自体、甚だ疑わしいものです。

    中国のことについて、アメリカのノーベル経済賞受賞者・ポール・クルーグマン氏は2016年末に次のように言ったことがあります。「経済分野で一旦緊急事態が発生すると、中国の共産党政権はまた高圧的な手段で状況をコントロールするだろう」と。

    実際の中国経済の動向をみれば、正にクルーグマン氏の言われた通りです。毎回事態が切迫すると、中国政府は必ずと言っていいほど力ずくで事態を鎮静化させているのです。要するに、「黒いスワン」にせよ、「灰色の犀」にせよ、(ドクサイ政権が崩壊しない限り)中国経済はこれらの危機によって崩壊するとは考えにくいのです。

    歴史的に見ても、中国の経済は常に政治と一蓮托生の関係にあります。経済の崩壊は即ち政治の崩壊を意味し、経済危機だけで経済の崩壊或いは政治の崩壊をもたらすようなことはなかったのです。勿論、支配層内部の危機、経済危機、社会底辺層の反抗と外敵の侵攻などが一緒に発生すれば、政権は十中八九崩壊しますが、今の中国は、そのような危険な状況にまだ程遠いと思われます。

    ただし、崩壊こそしないものの、中国経済は今後不振を続けるのも必至です!貧富の格差があれほど広がっている上、政府と個人部門の負債率もいまだに上昇し続けています。このままいけば、社会全体の消費能力はどんどん落ちていき、生産能力の過剰と需要の低迷との間の矛盾は一層深刻化していくものと予想されます(国際的にこの矛盾もかなり深刻のようですけれども。)。

    しかも、グローバル化の恩恵をあれだけ受けてきたからこそ、内発的危機は容易に抑えられるとしても、外発的危機は防ぎきれるかどうか、だれも予測することができません。中国にとって当面、一番危険な外発的危機は、言うまでもなく例のトランプ嵐です。

    アメリカ国内の産業振興と雇用創出を図るために、トランプ新政権は米国第一主義の一連の施策を繰り出していますが、そのうち、FRBの金利引き上げ及び資産圧縮、貿易不均衡の是正、為替操作国の認定などは、間接的または直接的に中国経済の行先を大いに揺さぶろうとしています。

    資産バブルで投資利益率が低下していることから、ここ数年、中国からの資本流出はただでさえ拡大しつつあります(2年半余りで外貨準備の四分の一位に当たる1兆ドル余りが失われた)。アメリカとの間で貿易戦争が起これば、更に為替操作国と認定されれば、中国の貿易黒字(対米貿易黒字は2016年、米貿易赤字の60%以上を占める)は直ちに激減してしまいます。そうなると、より安全かつ確実な利益を求めるための資本の流出は今までより一層加速化していくでしょう。

    3兆ドル余りの外貨準備は多いようですが、外債(2016年年末時点で1.4兆ドルを上回った)償還の他、通貨スワップ(5千億ドル規模)の履行や、原油(国内需要の65%が輸入に頼る)その他原材料及び食糧(市場の20%超が輸入に頼る)のなどの必需品の輸入に必要な代金を引いていきますと、残りは諸外国投資家の原資(2015年末までに金融分野を除いて実際に利用した外資は総額1.64兆ドルに達した)すらカバーできなくなります。

    そんな外貨枯渇の危機を防ぐために、7月の中央金融工作会議では金融の安定が強調され、個人資本の海外流出を一層厳しく管理するようという指示が出されました。内資の企業部門に対して、中国政府はこの会議に先立って3月から既に一連の海外投資差し止め措置を実施してきました。

    しかし、利益を追求する資本の移動はこういう規制措置によって完全にせき止められるとは到底考えられないのです。官製の為替市場に対して、民間の闇市場は常に存在しているし、地下銀行などのルートを通してホットマネーがここ数年中国を自由に出入りしているところを見ると、3兆ドル余りの外貨準備がどこまで持ち堪えられるか自ずと知れるものです。

    市場を求めて中国に進出するのはいいのですけれども、期待を裏切られて引き上げようとするときに、又は苦労して手に入れた利益を本社に送付しようとするときに、何らかの理由で送金できなくなってしまったら、もう悔やんでも遅いのです。外国投資家にとってこれこそ注意しなければならないチャイナリスクの一つと言えるでしょう。

    トランプ嵐をきっかけに国際貿易戦争が今後一気にグローバルに拡大していくでしょう。そのプロセスで人民元の大幅な値下がりやハイパーインフレの発生などは避けられないものと思われます。時代が大きく変わろうとしているだけに、こうした経済事象を随時にとらえて勉強し、今後の中国ビジネスの可能性及び危険性について真摯に研究していくのも私達の仕事の一環です。

Copyright © 北京度藍商務諮詢有限公司 All rights reserved