中華人民共和国外商投資法
(2019年3月15日第13期全国人民代表大会第2次会議採択、2020年1月1日施行)
第一章 総則
第1条 対外開放を更に拡大し、外商投資を積極的に促進し、外商投資に関する適法な権益を保護し、外商投資への管理を規範化し、全面的な開放という新しい局面の形成を推進し、社会主義市場経済の健全な発展を促進するため、憲法に基づき、この法律を制定する。
第2条 中華人民共和国国内(以下「中国国内」という。)における外商投資は、この法律を適用する。
2 この法律でいう外商投資とは、外国の自然人、企業又はその他の組織(以下「外国投資家」という。)が直接又は間接に中国国内で行う投資活動をいい、次の各号に掲げる場合を含む。
(1)外国投資家が単独又はその他の投資家と共同で中国国内で外商投資企業を設立する。
(2)外国投資家が中国国内企業の出資持分、株式、財産シェア又はその他類似の権益を取得する。
(3)外国投資家が単独又はその他の投資家と共同で中国国内で新しいプロジェクトに投資する。
(4)法律、行政法規又は国務院が定めたその他の方式による投資
3 この法律でいう外商投資企業とは、全部又は一部は外国投資家が投資し、中国の法律により中国国内で登記・登録を経て設立された企業をいう。
第3条 国は対外開放の基本的な国策を堅持し、外国投資家が法により中国国内で投資することを奨励する。
2 国は、ハイレベルの投資自由化・便利化政策を実行し、外商投資促進の仕組みを設立・健全化し、安定・透明・予期可能なかつ公平に競争できる市場環境を造る。
第4条 国は、外商投資について参入前内国民待遇+ネガティブリスト管理制度を実行する。
2 前項にいう参入前内国民待遇とは、投資の参入段階で外国投資家及びその投資について本国の投資家及びその投資に与えたのを下回らない待遇をいう。ネガティブリストとは、特定の分野で外商投資に対して実施すると国が定めた参入特別措置をいう。国は、ネガティブリスト以外の投資について内国民待遇を与える。
3 ネガティブリストは国務院が公布又は認可公布する。
4 中華人民共和国が締結し、又は参加した国際条約、協定に外国投資家参入待遇について更なる優遇規定がある場合は、関連する規定に従って執行することができる。
第5条 国は法により、中国国内における外国投資家の投資、収益及びその他適法な権益を保護する。
第6条 中国国内で投資活動を行う外国投資家、外商投資企業は、中国の法律、法規を遵守しなければならず、中国の国家安全に危害を与え、社会公共利益を損なってはならない。
第7条 国務院の商務主管部門、投資主管部門は職責に応じて分業し、外商投資の促進、保護及び管理作業を展開する。国務院のその他の関係部門はそれぞれの職責の範囲内で外商投資の促進、保護及び管理に関する作業について責任を負う。
2 県級以上の地方人民政府の関係部門は法律、法規及び本級人民政府が確定した職責により、外商投資の促進、保護及び管理作業を展開する。
第8条 外商投資企業の従業員は、法により組合組織を設立し、組合活動を展開し、従業員の適法な権益を保護する。外商投資企業は、本企業の組合のために必要な活動条件を提供しなければならない。
第2章 投資促進
第9条 外商投資企業は法により、平等に国が企業の発展を支持する各種政策を適用する。
第10条 外商投資に関係を有する法律、法規、規則を制定する場合は、適当な方式を採用して外商投資企業の意見及び提案を求めなければならない。
2 外商投資に関係を有する規範性文書、裁判文書などは、法により適時に公布しなければならない。
第11条 国は外商投資サービスシステムを樹立・健全化し、外国投資家及び外商投資企業のために法律法規、政策措置、投資プロジェクト情報等の分野のコンサルティング及びサービスを提供する。
第12条 国はその他の国及び地区、国際組織と多国間、両国間の投資促進協力システムを設立し、投資分野の国際交流と協力を強化する。
第13条 国は必要に応じて特殊な経済区域を設立し、又は一部地区で外商投資の試験的政策措置を実行し、外商投資を促進し、対外開放を拡大する。
第14条 国は国民経済及び社会発展の必要に応じて外国投資家が特定の業種、分野、地区で投資するのを奨励し、誘導する。外国投資家、外商投資企業は、法律、行政法規又は国民の規定に基づき優遇待遇を享受することができる。
第15条 国は外商投資企業が法により平等に標準制定作業に参与するのを保障し、標準制定に関わる情報の公開及び社会的監督を強化する。
2 国が制定した強制的な標準は、平等に外商投資企業に適用する。
第16条 国は外商投資企業が法により公平な競争を通じて政府の仕入れ活動に参与するのを保障する。政府の仕入れは法により、外商投資企業が中国国内で生産した製品及び提供するサービスに対して平等に対応する。
第17条 外商投資企業は法により株式、社債などの証券の公開的な発行及びその他の方式を通じて融資を行うことができる。
第18条 県級以上の地方人民政府は法律、行政法規、地方レベルの法規の定めに基づき、法定の権限範囲内で外商投資の促進及び便利化に関する政策措置を制定することができる。
第19条 各級人民政府及びその関係部門は便利、効率、透明の原則に基づき、事務手続きを簡素化し、事務効率を高め、政務サービスを最適化し、外商投資のサービスレベルを更に高めなければならない。
2 関連する主管部門は外商投資ガイドラインを作成・公布し、外国投資家及び外商投資企業のためにサービス及び便利を提供しなければならない。
第3章 投資保護
第20条 国は外国投資家の投資に対して収用を実行しない。
2 特殊の状況の下、国は公共的な利益の必要のために法の定めにより、外国投資家の投資に対して徴収又は収用を行うことができる。徴収、収用は法定の手続きにより行わなければならず、かつ適時に公平・合理的な補償を与えなければならない。
第21条 外国投資者は、中国国内における出資、利益、資本収益、資産処理所得、知的財産権許諾使用料、法によって獲得した補償又は賠償、清算所得等について、法により人民元又は外国為替でこれを自由に国内又は国外に送金することができる。
第22条 国は外国投資家及び外商投資企業の知的財産権を保護し、知的財産権の権利者及び関連する権利者の適法な権益を保護する。知的財産権を侵害する行為について、法により厳格に法的責任を追及する。
2 国は外商投資の過程において自由意志の原則及び商業規則に基づく技術協力の展開を奨励する。技術協力の条件は、投資各当事者が公平の原則に基づいて平等に協議することで確定する。行政機関及びその従業員は、行政的な手段を利用して強制的に技術譲渡を行わせてはならない。
第23条 行政機関及びその従業員は職務履行の過程に知り得た外国投資家、外商投資企業の商業秘密について法によりこれを秘密として保持しなければならず、これを漏洩し、又は不法に他人に提供してはならない。
第24条 各級人民政府及びその関係部門が外商投資に及ぶ規範的な文書を制定する場合は、法律、法規の定めに適合しなければならない。法律、行政法規の依拠がない場合は、外商投資企業の適法な権益を減少し、損害してはならず、又はその義務を増やしてはならず、市場参入及び撤退の条件を設置してはならず、外商投資企業の正常な生産経営活動に干渉してはならない。
第25条 地方各級人民政府及びその関係部門は外国投資家、外商投資企業に対して法により行った政策的な承諾及び法により締結した各種の契約を履行しなければならない。
2 国の利益、社会公共の利益の必要により政策的な承諾、契約の約定を変えなければならない場合は、法に定めた権限及び手続に基づきこれを行わなければならず、かつ法により外国投資家、外商投資企業がこれによって被った損失について補償しなければならない。
第26条 国は外商投資企業苦情申立て作業メカニズムを設立し、適時に外商投資企業又はその投資家が訴えた問題を処理し、協調して関連する政策措置の完全化を図る。
2 外商投資企業又はその投資家は行政機関及びその従業員の行政行為がその適法な権益を侵害したと考えた場合、外商投資企業苦情申立てメカニズムを通じて調停、解決を申請することができる。
3 外商投資企業又はその投資家は行政機関及びその従業員の行政行為がその適法な権益を侵害したと考えた場合、前項所定の外商投資企業苦情申立てメカニズムを通じて調停、解決を申請する以外、法により行政再議を申請し、行政訴訟を提起することができる。
第27条 外商投資企業は法により商会、協会を成立させ、又は自由意志でこれに参加することができる。商会、協会は法律、法規及び諦観の定めに基づき関連する活動を展開し、会員の適法な権益を維持し、保護する。
第4章 投資管理
第28条 外商投資参入ネガティブリストに投資禁止と定めた分野において、外国投資家は投資してはならない。
2 外商投資参入ネガティブリストに投資制限と定めた分野において、外国投資家は投資を行う場合、ネガティブリストに定めた条件に適合しなければならない。
3 外商投資ネガティブリスト以外の分野において、内資と外資が一致する原則に沿って管理を実施する。
第29条 外商投資で投資プロジェクトの審査承認、届け出手続きの処理を必要とする場合は、国の関係する規定に従って執行する。
第30条 外国投資家は法により許可の取得を必要とする業種、分野で投資を行う場合、法により関連する許可手続きを処理しなければならない。
2 関係主管部門は内資と一致する条件及び手続に基づき、外国投資家の許可申請を審査承認しなければならない。法律、行政法規に別途定めがある場合を除く。
第31条 外商投資企業の組織形態、組織機構及びその活動準則は、「中華人民共和国会社法」、「中華人民共和国パートナー企業法」などの法律の定めを適用する。
第32条 外商投資企業は生産経営活動を展開する場合、労働保護、社会保険に関する法律、行政法規の定めを遵守しなければならず、法律、行政法規及び国の関係規定により税収、会計、外国為替などの事項を処理し、かつ関連する主管部門が法により実施する監督検査を受けなければならない。
第33条 外国投資家が中国国内の企業を合併買収し、又はその他の方式で経営者集中に参与する場合は、「中華人民共和国独占禁止法」の定めにより経営者集中審査を受けなければならない。
第34条 国は外商投資情報報告制度を設立する。外国投資家又は外商投資企業は企業登録システム及び企業信用情報公開システムを通じて商務主管部門に対して投資情報を報告・送付しなければならない。
2 外商投資情報報告の内容及び範囲は確かに必要があるという原則に基づき確定し、部門情報共有を通じて獲得し得る投資情報について再び報告・送付を要求してはならない。
第35条 国は外商投資安全審査制度を設立し、国の安全に影響を与える又は与える恐れのある外商投資に対して安全審査を行う。
2 法により行った安全審査の決定は最終決定とする。
第5章 法律責任
第36条 外国投資家が外商投資参入ネガティブリスト所定の投資禁止分野に投資した場合は、関係主管部門が責任をもって投資活動を停止するよう命じ、期限を限ってその出資持分、資産を処分させ、又はその他の必要な措置を取り、投資前の状態に回復させる。違法所得があるときは、当該違法所得を没収する。
2 外国投資家の投資活動が外商投資参入ネガティブリスト所定の制限性参入特別管理措置に違反した場合は、関係主管部門が責任をもって期限を限って是正するよう命じ、参入特別管理措置の要求を満たすように必要な措置を取る。期限を徒過して是正しないときは、前項の規定に従い、処理する。
3 外国投資家の投資活動が外商投資参入ネガティブリストの定めに違反する場合は、前二項の規定により処理する以外、法により、相応する法律責任を負わなければならない。
第37条 外国投資家、外商投資企業がこの法律の規定に違反し、外商投資情報報告制度の要求に基づいて投資情報を報告・送付しない場合は、商務主管部門が責任をもって期限を限って是正するよう命じる。期限を徒過して是正しないときは、10万元以上50万元以下の過料を処する。
第38条 外国投資家、外商投資企業が法律、法規に違反する行為に対して、関係部門は法に従い、摘発・処分し、国の関係する規定に基づき信用情報システムに書き入れる。
第39条 行政機関の従業員が外商投資の促進、保護及び管理の作業中に職権を乱用し、職責を怠り、私利を図り、又は職責履行過程に知り得た商業秘密を他人に漏洩し、不法に提供した場合は、法により処分を与える。犯罪を構成するときは、法に従い、刑事責任を追及する。
第6章 付則
第40条 いずれの国又は地区が投資分野で中華人民共和国に対して差別的な禁止、制限又はその他類似の措置を取る場合は、中華人民共和国は実際の状況に応じて当該国又は地区に対して相応する措置を取ることができる。
第41条 外国投資家が中国国内で銀行業、証券業、保険業などの金融業種、又は証券市場、外国為替市場などの金融市場で行う投資の管理について国が別途定めがある場合は、その規定に従う。
第42条 この法律は、2020年1月1日より施行する。「中華人民共和国中外合弁経営企業法」、「中華人民共和国外資企業法」、「中華人民共和国中外合作経営企業法」は同時に廃止する。
2 この法律が施行する前に「中華人民共和国中外合弁経営企業法」、「中華人民共和国外資企業法」、「中華人民共和国中外合作経営企業法」により設立された外商投資企業は、この法律が施行した後5年以内において元の企業組織形態などを保留することができる。具体的な実施弁法は、国務院が定める。
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